2012年9月18日火曜日

時空の変換と座標変換

なんかゴチャゴチャと書いていたが勘違いをしていたしそんなに力む必要もなかった。(昔のは下にいちおう小文字で残しておきます。)対称性の議論をする際は時空を変換するし、スカラー場やベクトル場の特性をみるときは座標を変換する。しかし場当たり的な表記がそれを混同させる。

物理では時空点を座標表示し場の引数とする。古典場の場合我々に見える量は$\phi(x(p))$である。各々の変換がどのような変化を引き起こすかというと・・・

時空を変換する場合:
\[
\phi(x(p)) \rightarrow \phi(x(p')) = \phi(\Lambda^{-1}x(p)) \]
座標を変換する場合:
\[
\phi(x(p)) \rightarrow \phi(x'(p)) = \phi(\Lambda x(p))
\]
$\Lambda$の方向が変わるのは時空の変換を座標の変換に引き戻しているから。(下のdiagramを参照。)物理ではこれらの左辺を両方とも$\phi '(x(p))$とかいて、次のように表記するのである。
時空を変換する場合:
\[
\phi'(x')=\phi(x)
\]
座標を変換する場合:
\[
\phi'(x)=\phi(x')
\]

ミンコフスキー空間一枚を一つの座標で張れてしまうのでややこしいが、数式上は似ていてもやっていることや物理的哲学はまったく異なるので、厳密にしたいところである。


物理学の文脈でLorentz変換などという言葉が用いられるとき、これが一体何を変換しているのか分からないときがある。おそらく、文脈によって時空に対する変換としてのLorentz変換と座標変換としてのLorentz変換の二通りが混同されていると思われる。あるいは、明確に区別されずに、どちらつかずな状態で使用されているのではないか。事実、Wikipediaでも、冒頭の中だけで『2 つの慣性系の間の座標(時間座標と空間座標)を結びつける線形変換』とあったと思えば『ミンコフスキー空間における 2 点間の世界間隔を不変に保つような、原点を中心にした回転変換を表す。』とあり、混同することはなはだしい。

(ちなみに私はそもそも物理は座標によらないはずなのだから、座標変換としてのLorentz変換には意味がない。Lorentz変換とは時空に対する変換(Minkowski空間に対する作用)である、という立場である。)

ただ、その混同も致し方がないのかなと思う。いま簡単のためにMinkowski空間、もとい一枚の座標で覆い尽くすことのできる空間$M$を考えよう。そして$\Lambda$をLorentz群の元とする。$\Lambda$は$M$に作用する。さらに$M$上の座標$x$を考える。$x$は空間$M$から$\mathbf{R}^N$への写像である。すると、空間$M$上の変換$\Lambda$は自然に座標$x$の変換を誘導するのである!
まとめると、(xyjaxが使えたら!)
では、結局、時空の変換でも座標変換でもどちらでも議論は変わらんじゃないかと思われるかもしれないが、逆に座標変換から空間上の変換が自然に従うかというとそうではないし、空間が曲がり始めると、いよいよ座標変換と言う概念が物理的価値を失う。やはり (対称性の議論をしている場合においては) Lorentz変換と言ったら時空の変換なのである。

啖呵を切っておいて間違えているという恥ずかしい場合もあるので、気づいた方はご批判を頂ければ幸いである。

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